大腸がん治療の選択肢:腹腔鏡手術とその特徴

  • 消化器疾患

近年、食生活の欧米化が進む中で、大腸がんの患者数は増加の一途をたどっています。今や大腸がんは、がん罹患数(新たにがんと診断された患者数)は男性は年間約8万8000人で2位、女性では約6万8000人で2位です。がん死亡数も男性は年間約2万8000人で2位、女性では約2万4000人で1位です(国立がん研究センター「がん情報サービス」より)。

大腸がんの治療はステージと呼ばれる進行度により決まっています。早期であれば大腸カメラで切除可能です。しかし進行すると手術が必要であり、さらに遠くの臓器に多数転移している状態や、お腹の深いところのリンパ節に転移している状態(遠隔転移)では、手術でも切除しきれず化学療法(抗がん剤治療)となります。

手術に関しては昔はお腹を大きく切る開腹手術しかありませんでした。しかし30年ほど前から腹腔鏡手術が誕生し、現在では腹腔鏡手術は大腸がん治療の主要な選択肢となっています。では腹腔鏡手術とは具体的にどのような手法なのでしょうか?

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【目次】
■腹腔鏡手術の概要
■なぜ腹腔鏡手術が選ばれるのか?
■手術後のリスクとその対処法
■大腸がんの早期発見と腹腔鏡手術
■まとめ

腹腔鏡手術の概要

「腹腔鏡」とは、直訳すると「お腹の中をのぞくカメラ」といった意味合いになります。腹腔鏡手術は全身麻酔下で行い、5-12mm程度の小さな穴を患者のお腹に数カ所作成し、まずポートと呼ばれる筒を入れます。そしてお腹を二酸化炭素ガスで十分膨らませて視野を確保したあと、ポートから特殊なカメラ(腹腔鏡)や腹腔鏡手術用の鉗子(かんし)やハサミなどの様々な手術器具を挿入して手術を行う方法です。
この腹腔鏡を通して得られる映像はリアルタイムで大きなモニターに映し出されるため、医師は肉眼で直接見るよりはるかに拡大して詳しく病気の部位を見ることができ、その映像を基に精密な手術が可能となります。

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なぜ腹腔鏡手術が選ばれるのか?

次に腹腔鏡手術のメリットとデメリットについて解説します。

メリット

小さな手術痕

従来の開腹手術と比べ、手術の傷跡(手術痕)が非常に小さいです。これは見た目の美しさだけでなく、傷の治癒も早くなるという利点があります。

痛みの軽減

手術痕が小さいため術後の痛みが軽減されます。これにより患者さんのQOL(生活の質)の維持・向上が期待できます。
また術後にお腹の痛みが強いと痰が絡んでも咳をすることができず、肺炎や無気肺といった呼吸器の合併症を起こすことがあります。腹腔鏡手術では痛みが少ないことから、これらの合併症も予防できます。

回復が早い

痛みが少ないため早期からのリハビリが可能です。
術後の痛みなどでリハビリがなかなかできない場合、特に高齢者では廃用症候群といって足腰の筋力が衰えて歩けなくなったり、認知機能が悪化して自分で点滴の管を抜いてしまったり、入院していることが分からなくなったりすることがあります。
また高齢者でなくとも、特に肥満の患者さんでは、術後に脚の血管に血のかたまり(血栓)ができやすく、その血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症という致死的な合併症を引き起こすことがあります。肺塞栓症の予防のためにも早期からのリハビリが重要です。

腸の癒着リスクの減少

手術時の傷が小さいため、腸同士の癒着が少なく、晩期の合併症である癒着性腸閉塞のリスクが低くなります。

出血が少ない

開腹手術と比べて切る範囲がはるかに少ないこと、また手術中は気腹により静脈性の出血が抑えられることなどから出血が少ないです。

デメリット

技術的な難易度

二次元のモニター上での微細な操作が要求されるため、医師の高い技術や経験が必要です。なお最近では3D眼鏡が開発され、術野を3次元的に見られるようになってきました。

手術時間の延長

従来の開腹手術に比べて技術的な難易度が高いため、手術時間が長くなることが多いです。このため心臓や肺の機能が落ちている患者では手術ができないことがあります。

開腹手術への転換リスク

手術中に大出血や他の臓器の損傷など予期せぬ問題が生じた場合、従来の開腹手術に切り替わることがあります。

その他:手術が難しいケース

高度肥満の人は内臓脂肪が多いことから、また腹部に手術歴がある人では癒着のため、腹腔鏡手術は困難であり、開腹手術となることがあります。

手術後のリスクとその対処法

大腸がんの手術後にはいくつかの合併症が考えられます。以下に主なものとその対処法について解説します。

縫合不全

腸の縫合部分が不完全で、開いてしまうことです。これにより腸液が腸の外側に漏れ出ます。大腸のうちの肛門に近い直腸という部分の手術ではより起こりやすいです。発熱や腹痛などの症状が出る場合には再手術が必要となることがあります。

イレウス・腸閉塞

術後早期に生じる腸管の麻痺によるイレウス、半年以上経過してからの腸管の癒着による腸閉塞があります。イレウス・腸閉塞では腸管の拡張による腹部の膨満、嘔気・嘔吐が生じます。腹腔鏡手術ではこれらの発生リスクが減少します。
イレウスや腸閉塞になった際には、食事を止めたり、鼻から胃まで入れる管(胃管)や小腸まで届く管(イレウス管)を留置して腸の減圧を図ります。腸閉塞でイレウス管を入れても治らない場合には、癒着を剥がす手術(癒着剥離術)を行うことがあります。

排尿障害

直腸がんの手術の場合、自律神経の機能が落ちて尿が出づらくなることがあります。自律神経が温存されていれば早期の段階で適切なリハビリや治療を受けることで、多くの場合には時間とともに改善されます。

大腸がんの早期発見と腹腔鏡手術

大腸がんは早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、その後の生活の質や治療成績も大きく向上します。大腸がんの早期発見のために大腸カメラ検査は非常に重要です。大腸カメラ検査により、がんの初期段階や前がん状態のポリープなども発見・切除することが可能です。
ただし小さくても根の深いがんの場合には、大腸カメラでは切除できず手術が必要です。この他に進行がんでも大きくない段階のがんでは腹腔鏡手術の適応となりやすく、患者さんの身体への負担を大きく減少させることが期待されます。手術の負担が軽減されると、術後の回復も早まり、早く通常の生活に戻ることができます。

まとめ

腹腔鏡手術は、その名の通り腹腔内を直接目で見ながらの手術ではなく、カメラを用いて行う現代的な手術方法です。これにより手術の傷口が非常に小さく済むため、患者さんの身体への負担が大幅に軽減されるとともに、多くのメリットが得られます。しかしその一方で、医師の高い技術や豊富な経験が求められる手術でもあります。
健康診断や定期的な大腸カメラ検査を受け、早期に大腸がんを発見することが最も良い治療結果を得るための鍵です。大腸がんは罹患数・死亡数ともに順位が高いですが、早期に発見できれば治癒が望める病気です。万が一、大腸がんの診断を受けた場合は、主治医との十分なコミュニケーションを持ち、最適な治療法を選択することが大切です。

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