腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニアの手術とは?|治療法とリスクを解説

  • 池袋西口病院

突然の痛み、お腹の膨らみ。これが鼠径ヘルニアの始まりかもしれません。一度発症すると手術しか選択肢がないと言われていますが、実際のところ、どのような手術方法が存在するのでしょうか?特に近年注目されている「腹腔鏡手術」とは何か?鼠径ヘルニアという病気と腹腔鏡手術について知りましょう。

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【目次】
■鼠径ヘルニアとは?
■鼠径ヘルニアの手術:2つの術式
■鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術
■腹腔鏡手術のメリットとデメリット

■腹腔鏡を使った鼠経ヘルニア手術による合併症リスク
■まとめ:鼠径ヘルニアは入院手術の方がおすすめ!

鼠径ヘルニアとは?

鼠径ヘルニアは、腹膜で覆われた内部の空間(腹腔と呼ばれます)から腸管や脂肪、時折膀胱が、腹壁に生じた穴の部分や脆弱化した部分をから腹壁の外へ飛び出す状態のことです。これは、一般的に脱腸とも知られています。太腿の付け根部分に発生するヘルニアの総称を「鼠径ヘルニア」と言います。
鼠径ヘルニアは、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3タイプに区別されます。ヘルニアが鼠径部のどの部分に発生するかによって、タイプが分かれます。外鼠径ヘルニアは、解剖学的な理由から、男性に多く発生することがあります。
また、大腿ヘルニアは女性が発症することが多いとされています。
鼠径ヘルニアを発症する原因は、先天性(生まれつき)要因と後天性(生まれた後に発症する)要因があります。先天性の場合、生まれたときからヘルニア嚢いう腹膜が伸びてできた袋が存在するため、乳児期から鼠径ヘルニアを発症します。後天性の場合、立ったり座ったりという慢性的な鼠径部への圧力に加え、加齢による腹壁の脆弱化によって鼠径ヘルニアを発症します。
鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みを訴えて病院への受診をする場合がほとんどです。また、立っているとき、膨らみや違和感があるのに、横になると飛び出した腸管や脂肪の内容物が腹腔に戻るので膨らみや違和感がなくなるという症状は、鼠径ヘルニアの特徴的な症状です。
鼠径ヘルニアの診断は、基本的に問診と患部の視診・触診で行うことが可能です。しかし、それのみでは鼠径ヘルニアの種類や類似した疾患との鑑別をすることができないため、超音波検査も併用しています。
鼠径ヘルニアの治療は手術が原則です。腹壁にできたヘルニア嚢への治療と飛び出した内容物を戻す処置を行う必要があります。

鼠径ヘルニアの手術:2つの術式

鼠径ヘルニアの手術は、鼠径部に腹膜を通じて脱出した腸や脂肪を腹腔の正常な場所に戻し、再発を防ぐための処置を行う手術です。手術ではまず、筋肉や靭帯の隙間であるヘルニア門から飛び出たヘルニア嚢を、周囲の組織からヘルニア門の裏側まで剥離します。剥離したヘルニア嚢を切除もしくは元の場所へ戻し、ヘルニア門を閉じます。以前は組織縫合法というヘルニア門を縫合して閉じる方法が採用されていましたが、現在はメッシュという人工の膜でヘルニア門を覆い腹壁の脆弱性を強化する方法が一般的になっています。
鼠径ヘルニアの手術様式は2種類あります。一つは鼠径部を5~6cm切開し鼠径部の前方からアプローチする鼠径部切開法で、もう一つは腹腔鏡を用いる腹腔鏡法です。腹腔鏡法は、腹部に3か所の小さな穴を空けて手術する方法です。この方法でも同様にメッシュが使用されます。腹腔鏡法は、鼠径部切開法と比較して傷跡による身体へのダメージが少ないため、早期の社会復帰が可能と言われています。

鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術

腹腔鏡手術では、腹部に3か所の小さな穴(小さな穴を2か所、大きめの穴を1か所)を開けて実施します。3つのうち1つの穴から腹腔鏡いうカメラを挿入して、腹腔の中の様子をモニターで確認しながら実施します。また、炭酸ガスをお腹の中に注入して腹部を膨らませた状態にして、モニターの映像を見ながら鉗子と呼ばれるマジックハンドのような器具や電気メスを使用しながら手術を行います。腹腔鏡法は、従来のメスで患部を切開して行う鼠径部切開法とは違い、モニターで映像を見ながら遠隔で行う術式です。

腹腔鏡法手術ですが、大きく分けて2種類の方法があります。
✓TAPP法(腹腔内到達法)
✓TEP法(完全腹膜外修復法)

TAPP法(腹腔内到達法)

TAPP法は、内臓を包む腹膜を開けて、3か所の穴から腹腔の中を観察するため、ヘルニアの診断が容易であり、症状のない反対側のヘルニアも診断が可能です。また、腹膜と筋肉の間、腹膜の外側にヘルニア門を覆うメッシュを固定します。
研究報告では、腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニアの手術の約75%はこの方法とされています。

メリット

✓鼠径部に対する麻酔の鎮痛効果がある
✓確実なヘルニア門の修復が可能

デメリット

✓腹腔内臓器へのダメージのリスクがある

TEP法(完全腹膜外修復法)

TEP法は、腹膜を開かず、腹壁の筋膜と腹膜の間を剥がしてヘルニア門まで到達し、メッシュで穴を閉鎖します。この方法では、もともと空間のない腹壁と腹膜の間(腹膜外腔)を剥離していって空間を作り、ヘルニア門の裏側からメッシュで覆い、メッシュを固定します。

メリット

✓整容性に優れている
✓安全に飛び出した内容物を正常な部位に戻すことが可能
✓安全にヘルニア嚢の処理が可能
✓広範な腹膜外腔剥離により、十分な大きさのメッシュ留置が可能

デメリット

✓手術技術が難しく、熟練した技術と経験が必要

腹腔鏡手術のメリットとデメリット

これら二つの腹腔鏡手術には共通して以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

✓傷跡が小さく、痛みが少なくなる
✓術後合併症の慢性疼痛が少ない
✓両側の鼠径ヘルニアを同時に治療が可能
✓隠れたヘルニアを見落とさない

デメリット

✓鼠径部切開法と比較すると手術時間が長い(60分程度)
✓熟練した技術と経験が必要

腹腔鏡を使った鼠経ヘルニア手術による合併症リスク

外科的手術には必ず合併症のリスクがあります。比較的リスクが小さい腹腔鏡法による鼠経ヘルニア手術を行った際に、どのような合併症リスクがあるでしょうか。

慢性疼痛

術後3カ月時点で存在して6ヶ月以上続く痛みのことです。様々な要因により起こると考えられます。主に痺れているような痛みや内臓内の痛みを感じることが多いです。痛みが出現する動きや時間は、運動時、安静時、性交時、排尿時など多岐に渡ります。

感染

腹腔鏡手術では、皮膚の傷が小さく感染のリスクは鼠径部切開法より低いと考えられています。しかし、手術による傷跡やヘルニア門を覆ったメッシュで感染を起こすこともあります。その場合でも迅速に適切な処置を行えれば重篤な状態にはなりません。

消化管損傷・穿孔

腹腔鏡手術においては、腹腔内へカメラなどを挿入するためのポートいう管を挿入することにより消化管穿孔を起きる可能性があります。また、腹腔内で腸と腹膜の癒着を剥離する際に消化管損傷を起こす可能性があります。

腸閉塞

腹腔鏡手術、特にTAPP法では、腹膜に穴を開けて実施します。最終的に腹膜を縫合閉鎖します。腹膜の縫合に不備があり小さな穴が開いている場合、腸の一部がはまり込んで腹腔に戻らない状態を嵌頓と言います。嵌頓を放置すると腸への血流が減少してしまい、腸内で食物や消化液の移動が滞ってしまい腸閉塞を起こす可能性があります。その場合は早めの処置が必要です。

膀胱損傷

膀胱は鼠径部に近いところに位置しているため、ヘルニア門を閉じるために膀胱の周囲を剥離することがあります。その際に膀胱や膀胱の周囲へ損傷を起こす可能性あります。また、膀胱自体がヘルニア門から飛び出している場合もあるため、ヘルニア門の修復の過程で損傷を起こす可能性もあります。膀胱損傷が起こった際は尿道カテーテルを術後一定期間留置する処置が行われます。

まとめ:鼠径ヘルニアは入院手術の方がおすすめ!

鼠径ヘルニアは手術による治療が原則です。多くの場合は一度の手術により完治を目指すことが可能です。早めの受診で早期治療を受けることが重要です。また、術後の合併症のリスクは少ないですが、適切な処置を受けるためには入院手術が安全です。

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